あけめやみ とじめやみ
SFというかファンタジーというか、異世界が舞台の短編小説集だった…と思います。
思います、というのは、実は残念ながらストーリーをほとんど覚えてなくて……古代史や神話のような感触の読み物だった気がします。
短篇集のタイトルにもなっている作品が『あけめやみ とじめやみ』で、ストーリーすら覚えていないのに強烈に心に残る一節があります。
私と同じように感じていた人は他にも多いようで、ネット上にその文言の記述がありました。
漆黒の中では、目をあけていても闇、閉じていても闇
闇を見る勇気を持たぬもの、闇に呑まれ闇に没す
「目をあけても闇、閉じても闇、同じ闇ならば、目をあけて闇を見すえよ」というような文もあったと思います。
細かいところきちんと覚えていなくてすみませんが、だいたいの意味はこれで合っているはず。
「あけめやみ とじめやみ」
この呪文のような言葉に、私はどれだけ助けられてきたことか。
負の状況から、逃げない・負けない――
そういう単純なこととは、少し違うように理解してきました。
目を逸らさない。
ちゃんと見る。
それが何なのか考える。
どうすれば脱出できるのか考える。
そんな思考回路を持とうと心がけるようになったのは、この『あけめやみ とじめやみ』を読んでからです。
闇を「ちくしょー」とただ睨むだけじゃない――闇に呑まれるものかという気迫を秘めて、その闇が何者であるかを冷静に見てやる、という気持ち。
人から聞いた話や又聞きの情報(報道も含めて)を鵜呑みにしないで、自分で多角的に調べる・考えることが重要だと思うようになったのも、この頃からだったと思います。
結果、「こうするといいらしいよ」という他人のアドバイスをすんなり信じない可愛げのない人間になったわけですが(笑)
つらい現実でも、知らずに大きな後悔をするよりは、知ってやれるだけのことをやりたい。
闇が怖くとも、見つめる勇気がなければ闇に呑まれてしまうから。
『あけめやみ とじめやみ』は、1987年の作品です。
なんと30年前!
それを覚えているということは、それだけ私にとって大きなインパクトと影響を与えた言葉だからでしょう。
もし、つらい状況に陥ることがあったら「あけめやみ、とじめやみ」と呟いてみて下さい。
あなたに、きっと勇気をくれるはずです。
作:久美沙織(ハヤカワ文庫)